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【小説】

2013.09.01.Sun.01:23
ロスタイムに更新。ちょっとしたショートショートと、後でこっそり昔書いた怪しい短編を追加予定です。

本分は続きから。
こそっと追加した小説短編⇒


○諜報員募集のこと


『男性スパイ募集中 紫籐すみれ』
生徒の掲示板の隅っこの方に、そんな張り紙がされているのを発見した。
張り紙は街頭で貰うポケットティッシュの裏に入っている紙ほどの大きさで、掲示板の枠ぎりぎりに目立たないようにこっそり張られていた。
こっそり募集することに意味があるのかと思うが、スパイを大々的に募集する、というのもなんだかおかしな話だと思うで、多分このぐらいが丁度いい塩梅なのかもしれない。
しかし、スパイを募集、とはどういうことだろうか。
我が校の生徒会は『生徒会帝国』と呼ばれるほど権力が強い。この学園にも出資している、紫籐の令嬢であるところのすみれが就任してからは、さらにその権限を拡大している。
そのすみれ穣というのが、これまた超人のような人で、頭脳明晰かつ文武両道かつ才色兼備。しかもその美貌に関しては、全て持って生まれたもので、なんら努力はしたことがないという。
 何でも持ち、何でも一人でこなせるかのように振舞う人が、スパイを使うというのは、意外
さが半分、彼女も人の子であったのだなという安心感半分。
 スパイを男性に限定しているのには何か意味があるのだろうかという興味と、ちょっとした期待なんかもあって、僕はその募集に乗ってみることにした。
 時刻は放課後。張り紙には生徒会室ではなく、その近くの小さな空き教室が指定されているあたり、何だかスパイっぽい。かもしれない。
 僕は空き教室へ向かった。しかし、来てみればこんな教室この学校にあったっけ? と思うような寂れた雰囲気のある場所で、生徒会長どころか人がいる気配すらない。
 よくよく考えてみればあの張り紙自体が、悪戯で張られたものかもしれない。
 生徒会長がいない可能性が一気に高まったことと、何よりあれが悪戯である可能性をまったく考えなかった自分がいかに舞い上がっていたかということに、ひどく落胆して溜息が出た。
 でも折角ここまで来たし、一応教室の中だけでも覗いていくか、と僕は半ば仕方なく引き戸を開けた。
 ――目が合った。
 空き教室の窓際で振り返った黒曜の瞳が、僕を映していた。
「生徒会長……」
 お尻辺りまである長い黒髪。初めてみたとき、こんなに髪の長い人は見たことがないと、強く思ったのを覚えている。そこにいるのは紛れもなく、紫藤すみれだった。
「いかにも私が生徒会長の七尾すみれだが、君は?」
「あ、その……敷浪です。敷浪礼一郎。1年B組の」
「ここに何の用だ?」
「それは……」
 彼女の艶やかな美貌に気おされて、真っ白になっていた頭の中から、なんとか件の張り紙のことを思い出す。
「掲示板の張り紙を見て……スパイ募集中の……」
「ほう」
 次の一言が、非常にドキドキした。彼女があの張り紙を作ったと肯定するか否かで、僕がここに来た理由がはっきりするからだ。
「あれを見つけるとは、注意力的にも問題ないようだな」
「じゃあ、あれはやっぱり生徒会長が?」
「ああ、そうだ」
 いともあっさり生徒会長は頷いた。
「あの、それでスパイってどういうことなんですか?」
「言葉通りの意味だが?」
「つまりその、諜報活動という意味で?」
 紫藤すみれは、いともたやすく頷いた。
「うむ、近頃校内での喫煙が問題になっていることは知っているな? その調査を行ってもらいたいのだ」
「なるほど」
 スパイという単語のせいで、何かおどろおどろしいことをイメージしていたが、何のことはない、実に生徒会らしい話が出てきた。
「もちろん校内の見回りは定期的にやっているのだが、役員は顔が割れていてなかなか尻尾を出さんからな、それで一般の生徒に公募することにしたのだ。それに、どうしても私では出来ないことがあってな」
「生徒会長にも出来ないこと、ですか」
 この完全無欠をそのまま三次元に投影したような彼女に、無理なこと。それは一体なんなのだろう。
「私にだって出来ないことはある」
 彼女は小さく笑う。
 自分を評価されることに慣れている人間の口ぶりだが、やはり実力が伴っていると、嫌味にならない。
「でなければ、こうして頼んでなどいない。やってくれるな?」
 生徒会長自ら手に肩を置いてそう言うのだ。断れるわけがない。
彼女に出来ないことをやるのだという高揚感が、僕の首を縦に振らせた。
「では、頼む。喫煙者を見つけたら、即時報告してくれ」
 どんなことだろう。僕は期待に胸を高鳴らせた。
「流石に男子にトイレだけは、私が入るわけにはいかないからな」

(終わり)

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